2022.06.06
令和4年度 6月 全校朝礼 学校長講話 “Various Character 多角的な特質”
おはようございます。6月になり世間では少しずつコロナによる規制も緩んできましたが、今日の全校朝礼は放送で行います。気候はだんだん蒸し暑くなってきましたね。来月の終業式は少し暑くても中・高別に体育館に集まってもらおうと思っていますが、今月は教室でゆっくり視聴してください。
先週は高校3年と中学3年がそれぞれ北海道と東北方面へ、延期していた修学旅行に行きました。この2年間はコロナの関係で実施出来なかったので、久しぶりに宿泊を伴う行事が行えて本当に良かったです。クラブの試合の関係で参加しなかった人は残念でしたが、部活動も一生の思い出となります。先週末の大会でも各部の活躍がたくさん報告されています。また中1は集団行動を学ぶ日帰りの研修もありましたね。みなさん、良い思い出作りができましたか?それぞれプラスのエネルギーにして、特に高3生は、これからの大学受験に向け気持ちを切り替えて学習に取り組んでください。
また先週からは、教育実習の先生方が来られています。みなさんの先輩にあたる大学生で教員や教育関係の仕事を目指して勉強している方々です。授業やHRでお世話になることもありますが、まだまだ慣れないことも多いと思うので一緒に協力して、お互いに実りある貴重な経験となるようにしていきましょう。
さて今月は先月の「ポジティブな考え方」の話を別の角度から見て。「多様な考え方」という視点でお話ししたいと思います。先日、ラジオで興味深い内容の話を聞きました。「今朝の三枚おろし」という番組で、武田鉄矢さんが話をしておられます。その中で、世界の童話作家が選んだ最も優れた童話No.1に日本の「傘地蔵」が選ばれた、とのことでした。みなさんはこの「傘地蔵」を知っていますか。簡単に内容をお話ししましょう。
「とある雪深い山村に貧しい老夫婦が暮らしていました。大晦日なのに新年を迎えるための餅すら買うことができません。そこでおじいさんは、それまで作ってきた笠を売ることにし、町に出かけていきました。ところがぜんぜん売れず夜になり、おじいさんは売ることをあきらめて帰路につきます。吹雪の中、おじいさんは道端に6体のお地蔵さまを見かけます。その様子を見て「寒かろうに」と思い、お地蔵さまの頭に降り積もった雪を払い、持っていた5つの笠を一つずつ被せていきました。一つ足りず困ったおじいさんは、自分が使っている笠を最後のお地蔵さまにお被せし、自分は雪にまみれて家へ帰っていきました。おじいさんから話を聴いたおばあさんは、「それはよいことをしましたね!」と言い、責めたりしませんでした。その夜二人が寝ていると、家の外で何か音がします。外の様子を伺うと、家の前に餅・お米、野菜に小判などの財宝が山と積まれているではありませんか。二人は感謝しながら遠くに笠をかぶった六人のお地蔵さまが去ってゆくのを見送るのでした。この贈り物のおかげで、老夫婦は良い新年を迎えることができ、その後も幸せに暮らすことができたとさ。」
これは語り伝えられている昔話しなので、地方によっては少し内容が違っていますが(売るものがおばあさんの作った古着だったり、おじいさんが集めた薪だったり、それを町で同じく売れ残って困っていた笠商人と交換したなど)、大筋は変わりません。日本でのこのお話の本質は「善い行いをした人に対して、幸せが訪れる」ということだと思います。
しかしこの話の視点は別にもあり、そこが世界の童話作家から評価されているとのこと。おじいさんは町に行くときも雪の中お地蔵さんの横を通っています。しかしその時にはスルーしているのに、帰り道では笠を被せています。「人は窮地に立たされないと、奇跡には遭遇出来ない」という解釈だそうです。これを聞いて私は自分には思いつかないような面白い発想だと思いました。
もう一つ、私の体験ですが、20代の頃よくアメリカに旅行していました。シアトルのある家庭にホームステイをした時のことです。その家庭には3~4歳になる娘さんがいたので、お土産に日本の昔話の絵本を持っていきました。絵本は日本語で書いてあるので私が英語に訳しながら、娘さんへ読み聞かせをしていました。日本で人気の昔話、例えば「桃太郎」や「かぐや姫」、「浦島太郎」など様々なお話の中で、アメリカ人ホストファミリーのお母さんがダントツで「これが一番面白い!」と言ったのは何だと思いますか?
それは「鶴の恩返し」でも「はなさかじいさん」でもなく「一寸法師」や「金太郎」でもありません。実は「ねずみの嫁入り」だったのです。あまり馴染みのないお話かもしれませんね。ストーリーは次のような内容です。
むかし、むかし。あるところに、ねずみの夫婦と娘がおりました。
「うちの娘にふさわしい、りっぱなお婿さんを見つけよう!
この世で一番強いのは、誰だろう?」 ねずみは、太陽を見上げました。
「そうだ。いつもわしらを照らしてくれる太陽さんは、一番強いにちがいない」
ねずみは太陽に言います。「日本一強い太陽さん、娘のお婿さんになってください!」
すると太陽は言いました。「いや私よりも雲のほうが強いよ。私を隠してしまうのだから」
なるほど、とねずみは思いました。そして雲の元へ向かいます。
「世界一強い雲さん、娘のお婿さんになってください!」
ところが雲は言いました。「僕より風のほうが強いよ。僕を吹き飛ばしてしまうからね」
ねずみは、風の元へと向かいます。
「この世で一番強い風さん、娘のお婿さんになってください!」
しかし風は言いました。「オレより壁のほうが強いさ。いくら吹いてもびくともしないよ」
ねずみは、壁の元へ向かいます。
「壁さん、あなたは誰よりも強いのでしょう?娘のお婿さんになってください!」
けれども壁は言いました。「わしなんかより、ねずみのほうがずっと強いぞ!」
それを聞いてねずみはびっくり仰天です。「壁さんより、ねずみのほうが強いのですか?」
「ああ、そうだ。前歯でかじられて、穴をあけられては敵わないよ!」
ねずみは帰りながら思いました。一番強いのは、私たちだったのか。
そこでねずみは、娘と仲の良い、隣のねずみのことを思い出します。
「きみこそ、うちの娘にふさわしい!どうかお婿さんになっておくれ。」
「喜んで!」 そして娘は隣りのねずみと結婚し、幸せに暮らしましたとさ。
いかがですか。みなさんはこの昔話を聞いて、アメリカのホストファミリーが感じたように‟So cute!”だと感じましたか。この話の教訓は日本では「物や人の優劣は、簡単に決められるものではない」とされています。例えば誰が強いかなど、立場や見方によって左右され、それぞれ秀でた所も苦手な事もあるということです。
しかし私は当時ホストファミリーとこの話についてやりとりをしていて「諦めずに頑張れば、必ず結果が伴う」という解釈を聞いた記憶があります。私は「いかにもアメリカ人的な見方だなぁ」と思いました。American Dreamという言葉を聞いたことがあるでしょう。叶わない夢はない、という意味です。確かにそういう見方もできるかもしれません。
私が今日の2つの昔話の解釈からみなさんに伝えたいことは、冒頭でも話した「多様な考え方」です。物事には色々な見方や考え方があり、それらを多角的に見ていくことで、自分の視野も広がっていきます。そうすれば相手の意見を尊重しながら、また自分の考えを相手にうまく伝える、という優れたコミュニケーション能力も培われていくと思います。
今日は、物事を捉えるときの様々な考え方や見方、そしてそれを尊重することの大切さついても併せて考えました。修学旅行明けでくたびれている人もいるかもしれません。無理をせず健康管理をしっかりと行いながら、元気に梅雨を乗り切っていきましょう。
Aim for a Higher Level2!!