2024.03.16
令和5年度3学期終業式 学校長講話
おはようございます。今日で令和5年度を終業します。今年度もまだコロナの影響はありましたが、近校祭や修学旅行、芸術鑑賞といった大きな行事も予定通り実施出来ましたし、みなさんと対面でお話しできることを本当に嬉しく思っています。次年度からは校歌も歌いましょうね。また今年度クラブ活動や研究発表などで、たくさんの素晴らしいの成果を上げてくれました。中学ダンス部はアメリカ大会に出場しますし、文化部も運動部もそれぞれ本当によく頑張ってくれました。また探究活動にも積極的に参加してくれましたね。
さて例年私がみなさんにお願いしていることですが、年度の終わりに当たって、この1年間で自分がどのように成長したかを、振り返ってほしいと思っています。そこでまず私が今年度、みなさんに式典や全校朝礼などでお話しした内容を振り返り、簡単に年度のまとめをしていきます。
まず1学期の始業式では、「新しい価値観や考え方が進んでいく」というパラダイム・シフトについて話しました。5月には「五月病」のストレスを「わくわく」に変えていこうという呼びかけをし、6月は「目標設定」の大切さと「同調圧力」に負けない勇気について考えを深めました。そして終業式では、是枝裕和監督の映画「怪物」から、多角的なものの見方を学びました。
2学期は始業式でNever-Mind Spiritsと題して「忘れ上手」になろうというお話をし、10月は「DICE~頭脳をかけて~」のテーマで開催した近校祭・文化祭について取り上げました。11月には近畿大学の創立記念日に因んで、世耕弘一先生がベルリンに留学されて100周年を迎えるにあたり、その意思を継ごうというお話から「本物を知る」ことの大切さも併せて学ぶことが出来ました。12月の終業式では、今年の漢字「税」からDutyつまり義務について考え、迷った際のSeize the Day!「今を生きる」ことをお伝えましたね。
年が明けて3学期の始業式では、私のおみくじ体験から「志を変える勿れ」というメッセージをみなさんに贈り、そして1月末の高3生と一緒の最後の全校朝礼では、日本が世界に誇る文化「ゴジラ」から山崎貴監督の「ゴジラ―1.0」を深掘りしました。みなさんもこの1年を振り返り、これらの話を自分にフィードバックさせて、さらに高いレベルを目指してほしいと思います。
さて今日は、まず在校生のみなさんに質問です。私は広島県には全国に、世界に誇る「3つのプロ団体」があると思っています。まず言うまでもなく、野球の広島東洋カープ、そしてサッカーのサンフレッチェ広島が挙げられます。さてあと1つは何だと思いますか?ヒント!スポーツではありません。バスケットの広島ドラゴンフライズやバレーボールのJTサンダーズ広島も活躍していますが、私は文化面にも注目しました。
答えは、昨年創立60周年を迎え、「広響」の愛称で親しまれている「広島交響楽団 」です。(「広島ウインド・オーケストラ」という吹奏楽団も有名ですが、私は広響の演奏会によく行くので、こちらを推したいと思います。吹奏楽団はクラリネットやフルートなどの木管楽器やトランペットやホルンなどの金管楽器が中心のオーケストラですが、交響楽団には管楽器の他にもバイオリンやビオラ、チェロなどの弦楽器が入ります。)
実は今月に入って、7年間その広響の音楽監督を務められた指揮者の下野竜也 さんが、日本のトップ・オーケストラと言われるNHK交響楽団の正指揮者になり、3月をもって広響をお辞めになるというので、私はその最後の定期演奏会に行ってきました。マエストロと広響のコンサートには幾度となく足を運んできましたが、今回、まさに渾身の演奏をされたブルックナーの交響曲第8番には、思わず涙するほど感動しました。(この演奏会には、湯崎広島県知事も私の右後方の席で鑑賞されていました。)下野さんはこのファイナル・コンサートのプログラムにメッセージを掲載されていて、その内容がとても良かったので、少し紹介したいと思います。
そこには、7年前にベテランの秋山和慶さんの後を継いで広響の音楽監督に就任されてからしばらくは、思うように演奏会の観客数も伸びず、楽員・スタッフから共感も得られずに、大変苦労されたエピソードが載っており、その時の様子をこう書かれています。 「いくら勉強をし準備をしていても、それが成果として表れ、お客様に良い音楽をお届けする事が出来なければ何もならないという現実。仰げば仰ぐ程、遠くに見える師の背中。」
そんな時に新型コロナウイルスによるロックダウンが世界を襲います。コロナ禍の不安の中で、無観客によるコンサートを再開した時に、下野さんは気付きました。「私が壁を作っていたのだ」と。そしてそこからは楽員やお客様への力みが消え、一緒にハーモニーを築く事の楽しさと面白さを共有できるようになったそうです。
私からすれば今や日本を代表する名指揮者であるマエストロでさえも、ほんの数年前にこんな苦労をされていたのだという驚きと、上手くいかない時にその原因を他に求めるのではなく自分の責任だったと振り返ることのできる下野さんの人間性に深く感動しました。
みなさんは、努力しても頑張っても、物事が思い通りにならない時に、それを誰かのせいにしたり、責任転嫁する事はありませんか?でも冷静によくよく考えてみると、それは結局自分の蒔いた種だったりして、でもそれを認めたくない、その責任から逃れたいから、誰かに原因を押し付けていたような事は無かったでしょうか?
みなさんは来月から学年が進み、上級生になっていきます。成長するのは体だけではなく心も一緒に育たなければなりません。ぜひ何か物事が上手くいかなかったときに、それを誰かのせいにするのではなく、自分のどこに原因があったのかを考え、さらにそこから修正して次のステップへと高めていくことが出来るようになってください。
これから始まる春休みはその絶好のチャンスです。普段は宿題や部活などの時間に追われてなかなか考えを深める余裕がなかった人も、この期間にじっくりと1年を振り返ってみて、ぜひ反省と共に前向きに考え、自分なりの個性を磨く期間にしてください。
先ほどのマエストロ下野は、広響の『桂冠指揮者』に指名され、最後にこう締めくくっておられます。「学校の先生になるのが小さい頃からの夢でした。今後、広響とのステージは学校公演を中心としたものにさせていただきます。」そして「子供が目を輝かしてくれる様な音楽を届けて行きたい」とも仰っています。本校にもいつかお招きしたいものですね。
今日は、1年の振り返りと広響の音楽監督・下野竜也さんについて取り上げました。それではまた4月の始業式に、成長したみなさんとお会いするのを楽しみにしています。この春休みの間、元気で充実した生活を送ってください。 Aim for a Higher Level!