2024.12.17
令和6年度 2学期終業式 学校長講話「Rewarding Or Satisfied:仕事の本質」
振り返ってみると今年度は近校祭や修学旅行、芸術鑑賞など様々な行事も、コロナ前と同じように実施ができ、充実した学校生活が送れましたね。今日の午後からはグローバルスタディーズ・プログラムも始まります。引き続き、学習やクラブ活動を頑張っていきましょう。
さて今日は、卒業生についてのお話をします。私はもう40年近くも学校の先生をしているので、担任として卒業生を送り出した経験も多くある、と言いたいところなのですが、実は意外と少なく、実際に高校3年生の担任としての経験はたった4回しかありません。若い頃は高校1年生の担任が多かったし、40歳を過ぎたころにはもう管理職になり、自分よりもっと若い先生方に担任をしてもらっていました。それ以降は学年全体を遠くから見送る感じで、ちょっと寂しい思いをしていましたね。
でもそんな数少ない自分のクラスの卒業生には思い入れも深く、彼らも25年以上経った今でも、還暦のお祝いをしてくれたり、食事会や同窓会に誘ってくれたりと、ずっと繋がっている卒業生もいます。そんな中の一人(福山校時代の卒業生)が先日、相談があるということで中学3年生の息子くんを連れて本校に遊びに来てくれました。
相談の内容は、中3の息子くんが将来についてイメージしづらく悩んでいるので、何かアドバイスを貰いたい、というものでした。なるほど、高校生の時にたいへん真面目だったお父さん(卒業生)が、思春期の息子とわざわざ遠路はるばる来てくれたのだから、何かお役に立てればと色々なお話をしました。
「でも中3で将来のイメージがハッキリするなんてまだ無理だよね~、公立中だったら、いよいよ高校受験だね、どこの高校を狙っているの?学校ではどんな科目が得意で、苦手なのはあるかな?部活はどう?どんなことをしていたら楽しいと感じるのかな?」などと、とりとめもなくいろいろ楽しく話しました。
その時の息子くんへの私の印象は、それまで想像していた『来たくないのに親に渋々連れてこられている中学生』の様子とは全く違って、たいへん快活な中学生でした。話を聞くと、楽しいのは大人と話すこと(特に先生とお話すると面白い!)とか、理系科目が得意だとか、部活が楽しいとか、いったい何が悩みなの?と言いたくなるほど。
うーん、真面目なお父さんが、気をまわしすぎて心配しているのかな?とも受け取れる状態です。親子関係もとても良さそうです。私はやや自己懐疑的にではありましたが、自分の体験談や彼のお父さん(卒業生)が私と高校時代に過ごした思い出などを含めながら、「とにかく迷ったときには自分の好きな方向を目指せばいい、やりたいことをすべきだ」というお話をしました。
そして、先生と話すのが楽しいなら、学校の教員を目指せばどう?と尋ねました。でもそこは彼が懐疑的で、理由は「仕事が大変そうだから」ということ。(正直でいいです!)最近マスコミでは、学校の先生の仕事はブラックだ(休みがないとか保護者対応が大変だとか安月給・残業代もないなど)と様々報道されていて、仕方がないとは思いますが、本当にそうなのかどうかを話しました。
まず仕事の本質は2通り。「生活」と「やりがい」です。極端な話、あまりしたくない仕事を生活のためにやっている(Rewarding)方も多くおられるし、一方一見めちゃくちゃ大変な仕事でも誇りとやりがいを持って続けておられる(Satisfied)人もいっぱいいますよね。教員は「やりがい派」です。嫌々先生をやろうとする人はいませんし、本校の先生方を例に挙げても、そんな人はいらっしゃらないと思います。
でも傍から見ているだけでは分からない場合も多いので、就職時にはミスマッチを防ぐためにもインターンシップ制度があるのです。先生の場合は、教育実習ですね。しんどくてもやりがいがあり楽しいと思える内容なら、少々の苦しさは乗り越えられます。もちろん給与面や休暇取得の問題など改善の余地も多いので、そこは取り組んで行かねばなりませんが、放課後の補習や部活も生徒の喜ぶ顔を見たいから、遅くまで自主的に行っている先生が多いのです。
そして私には(そして多くの教員経験者には)、今回相談に来てくれたような、自分のことを信頼してくれる卒業生がいます。それはどんなにお金を出しても買うことのできない宝物です。仕事はしないと生活は出来ません。であれば少々大変でも、やりがいのある自分の好きなことをやってお金が貰える方が素敵だと思いませんか?例えば教員とはそういうものだと私は思っています。
そんな話を卒業生の息子くんにしたと思います。どこまで私の想いが伝わったかは分かりませんが、後日、その卒業生からのメッセージの中に、「息子は、先生に会えて良かったといってました」という一言を見た時にはまた、嬉しさ倍増、しんどさ半減!おまけにこの卒業生は、私のことを「悩む子に響く恩師の助言」として新聞に投稿してくれたのです(中國新聞2024年12月10日版)。またひとつ私の宝物が増えました。
今日のお話のポイントは2つ。まず卒業生の息子くんの例から、将来について考えるのは決して面倒でネガティブなことではなく、可能性を広げるとても楽しいポジティブなこと。もう1つは、私の体験例から、しんどくてもやりがい(目的)のあることは苦労にならず、その先には宝物が待っている(かも)、ということです。
今、受験勉強でとても辛い思いをして頑張っている高3生のみなさんも、将来のことを前向きに考えて頑張り、平常心で受験という難局を乗り切ってください!また他の生徒の皆さんも、何かとしんどいときがあってもポジティブ思考でいきましょうね。
さあ、2025年(令和7年)という新年を迎えるにあたり、みなさんはこの冬休み中にどんなことが出来るでしょうか、そして未来の自分に繋いでいくことが出来るでしょうか。来年がみなさんにとって素晴らしい1年になりますように!
また1月7日の始業式でお会いしましょう。