2022.12.17
令和4年度2学期終業式 学校長講話 “戦~Struggle~”
今日で令和4年度2学期を終業します。令和4年もあとわずかとなりました。今年を振り返ってみると昨年に引き続き新型コロナウイルスの影響で、本当に大変な1年でした。それでも近校祭(体育祭・文化祭)は無観客だったり内容を変更したり工夫をしながらですが、何とかウイズコロナで実施ができました。修学旅行も3年ぶりに予定通り行えました。先月の芸術鑑賞「EDDIE」も感動しましたね。また生徒会も学校生活をより良くするために色々な案を考えてくれています。引き続きコロナに負けないよう、頑張っていきましょう。
さて、そんなこの一年の世相を表す「今年の漢字」には「戦」が選ばれました。(昨年はオリンピックにちなんで「金」でした。)英語で言うと戦争はwarですが、個々の争いはbattleやfightです。今年はロシアのウクライナ侵攻があり、より身近に「戦争」の脅威を感じる1年でした。でもポジティブに考えるなら、今年は4年に1度のサッカーのワールドカップ(game, match)が行われ、日本の選手たちが世界の強豪チームと戦い、素晴らしい活躍で私たちに感動を与えてくれました。みなさんは、この1年を振り返ってみて、どんな「戦」を思い浮かべましたか。
私は今月に入って、とても心に響く「戦」の経験をしたので少しお伝えしたいと思います。今月初めに、京都にいる私の大学時代の友人の息子さんが出演する、ある大学の交響楽団の定期演奏会を聴きに行ってきました。その息子さんは現在大学1年生なので、みなさんよりも少し先輩です。彼は大学に合格してから初めてヴァイオリンを習おうと決心し、入学後に大学の楽団に入部しました。それまで楽器を手にしたことはなかったそうです。
なぜ彼がそれまで経験したことのない世界に飛び込もうとしたか詳しくは伺っていませんが、ともかく初心者としてヴァイオリンを始めたわけです。それから8か月、大学の勉学と両立しながら練習に励んで、彼はこの度の定期演奏会の1曲目に初めての舞台で第1ヴァイオリンの一人として出演しました。1曲だけ、わずか7分間の合奏でした(コンサートはその後も大曲が2曲ありましたが彼の出番はこの1曲でした)が、私は聴いていてとても感動しました。10人ほどいる第1ヴァイオリンの1人ではありますが、一生懸命に演奏する姿を見て、また彼が恐らくここまでに経験したことを考えると胸が熱くなりました。楽団員の中には小さい頃から楽器を習っていて、彼よりもずっと上手に弾くことのできる人が沢山いたはずです。
そんな中で初心者の彼が過ごしたこの8か月間は、まさにヴァイオリンという楽器と、さらには複雑な楽譜と向き合いながら、日々練習を重ねる自分との孤独な「戦い」だったと思うのです。周囲からのプレッシャーもあったでしょう。私の友人(彼のお父さん)曰く「半年前はギコギコとカエルの歌を弾いていた」レベルだったとのこと。そんな彼がフルオーケストラで立派に演奏している様子は、本当に感動的でした。彼の出番が終ったあとの休憩中にロビーで偶然出会ったので、「演奏はどうだった?」という私の問いかけに「いやー、少し抜けちゃった(ミスした)ところもあって…」と照れくさそうに話す彼はとてもいい表情をしていました。
みなさんもこのように自分と向き合いながら、大変だけれどやりがいのある体験をしたことがありますか?辛く厳しい自己との対話はある意味、自分との「戦い」だと思います。(この場合の英語はstruggleですね。)彼も練習していてきっと何度も挫けそうになったと思います。でも頑張って続けることが出来ました。そしてその先には何物にも代えがたい、自分だけしか味わえない貴重な経験が待っていたのです。しかもそれは聴いていた私たちみんなの心をとても豊かにしてくれました。
みなさんはこの話を聞いて、自分の所属するクラブ活動を思い浮かべた人が多いと思います。また今年行った様々な探究活動とプレゼンの体験を思い出した人もいるかもしれません。そして高3生はまさに今直面している受験勉強と重ね合わせた人もいるでしょう。それぞれ辛かった思い出やしんどい時期を経て今があります。高3生はこれからもっと自分と向き合い、そして「戦い」ながら学習を続けていけねばなりません。でもそれはみなさん自身の貴重な体験となりますし、自分に負けそうになっても「あと少しだけ」頑張ってみようという気持ちで、自分との「戦い」を勝ち抜いてほしいのです。どのような結果であろうとみなさんのそのひた向きな姿は、私たち先生方の心もきっと豊かにしてくれると思います。
このように今年もコロナ禍という逆境の中、自己との「戦い」に立ち向かって頑張った人たちから、たくさんのエネルギーを貰うことが出来ました。先ほどお話ししたヴァイオリンの彼は、半年後の演奏会でメインのプログラムとなるベートーヴェンの交響曲で第2ヴァイオリンを演奏することが決まったそうです。さらに自分と向き合い成長した彼の姿を見る(聴く?)のを今から楽しみにしています。
さあ、2023年(令和5年)という新年を迎えるにあたり、みなさんはこの冬休み中にどんな自分と「戦い」、そして未来の自分に繋いでいくことが出来るでしょうか。もう目標は立てていますか?来年がみなさんにとって素晴らしい1年になりますように!
また1月6日の始業式でお会いしましょう。
“Aim for a Higher Level !!”