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校長室

2024.01.31

令和5年度 3学期全校朝礼 学校長講話 “Godzilla -1.0”

おはようございます。1月31日は毎年、高校3年生が在校生のみなさんと一緒に登校する最後の日になります。明日からも高3生は国公立大学の二次試験対策や近畿大学の入学前講座で登校しますが、中学生も含めて全体で一緒に集まる機会はもうありません。少し寂しい気持ちになりますが、高3生のみなさんはこれからも3月まで厳しい入試が続いたり、大学に提出する課題や事前学習、資格試験などもありまだまだ大変です。そこで、受験生のみなさんへ再度、アドバイスです。

“Calm down !” とにかく普段の実力が発揮できるように「平常心!」がキーワード。
“Try to compose your mind and do your best!”
在校生、教職員含め1000人以上で応援していますよ!

さて、今日は半年ぶりに映画の話題を取り上げてみたいと思います。前回は1学期の終業式で是枝裕和監督の「怪物」についてお話ししました。今回も日本の作品です。この度、アメリカ・アカデミー賞の長編アニメーション賞にノミネートされた宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」も大変面白い作品だったのですが、今日は同じくオスカーの視覚効果賞にノミネートされた山崎貴監督の「ゴジラ-1.0(マイナス・ワン)」を取り上げます。

「ゴジラ」といえば日本が世界に誇る怪獣映画で、1作目は昭和29年(1954年)に公開されています。私が生まれる7年も前のことです。それ以来なんと30本もの実写版が作られ、今回が生誕70周年記念作品となるそうです。また日本の東宝が制作したゴジラ以外にもハリウッド版モンスター・ヴァースやアニメ版など多くの作品があり、音楽やゲームなどのエンタメも含め、もはやゴジラは「日本の文化」と言っても過言ではありません。

ただ多くの人が「ゴジラ」=「怪獣映画」=「子ども向け」という印象を持つでしょう。実際にゴジラ-1.0が公開されてすぐ観た後、「面白かったよ」と友人や先生方に話しても「ゴジラでしょ?」とか「ゴジラはねぇ」と何だか見下げたカンジの反応でした。7年前の庵野秀明&樋口真嗣監督コンビによる「シン・ゴジラ」のヒットでゴジラが単なる子ども向けではなく、評価に値する映画としての市民権を得たと思っていただけに、また小さい頃からゴジラファンの私としては、ちょっと残念な気持ちになりました。

その後、ゴジラ-1.0は日本国内は元より海外でも大ヒットとなり、アメリカでは日本映画(実写版)の興行記録を塗り替えたり、オスカーにノミネートされるなどして、一般的にもこの映画の良さが浸透してきています。またYouTubeなどのメディアでも沢山取り上げられており、その話題は、舞台となる日本の戦後の様子、核の脅威、VFX、海外での反響の分析など切り口も様々ですが、今日は私なりの考えをみなさんと共有したいと思います。

まずはネタバレの無い程度にストーリーをお話しすると、「第2次世界大戦末期、主人公の敷島は特攻隊を逃れ、終戦後日本へ帰還するが、東京は焼け野原と化していた。人々が日々を懸命に生き抜く中、突如ゴジラが現れ復興途上の街を破壊していく。占領下で独自の軍隊を持たない日本は民間人のみでゴジラに立ち向わねばならず…」という内容です。

私がなぜこのゴジラ-1.0について話したいと思ったのかというと、自分自身の中学・高校時代のある経験を思い出したからなのです。映画好きだった私は15歳の頃、仲の良かった友人の誘いを受けて、一緒に何度か昔の映画の自主上映会で小林多喜二原作の「蟹工船(1953年)」や徳永直原作の「太陽のない街(1954年)」などを観に行きました。

当時(1970年代)としても古い8ミリフィルムの映写機で、当然モノクロの上映でした。作品自体が古いため見にくいし、音も割れていて良くありません。でも上映している方の熱意と観に来ている人々の熱気が感じられる上映会でした。所謂プロレタリア文学の映画化作品です。話の内容に興味のある人は、図書館やSNSで調べてみてください。(他にも「二十四の瞳(1954年)」や「キューポラのある街(1962年)」を観た記憶があります。)

今から思えば、当時これらの作品の本質を理解するには未熟な私でしたが、どの作品からも「敵対する巨大組織に立ち向かい挫けながらも、希望を失わない人間の強さや前向きに生きようとする人たちの信念」を肌で感じて「凄いなぁ!」と心に響いたことを覚えています。この感覚は、大人になってから私の中で一つの拠り所となり、しんどい時や辛くて逃げ出したくなった際に何とか踏ん張ろうとする原動力になっている気がするのです。

そこで今回のゴジラ-1.0です。私がこの作品を観たときに、妙に懐かしさを感じたのは、焼け果てた戦後の風景ではなく(戦後20年近く経ってから生まれた私はそんな歳ではありません!ウルトラマン、宇宙戦艦ヤマトの高度成長期世代です)、ゴジラという圧倒的な脅威に対して不安と戦いながらも自分の愛するものを守り、信念を貫こうと抗う人たちの姿が、学生の時に観た映画の内容とオーバーラップしたからだと思います。つまりこの作品は怪獣映画というよりも、人間を描いたドラマになっており、だからこそ海外でも高く評価されているのでしょう。

それだけではなくゴジラ-1.0は、山崎監督によるややオーバーアクトの神木隆之介さんを始めとする俳優陣、セリフに説明が多く昭和テイストの脚本、あのルーカスフィルムも絶賛するVFX(特に海上でのシーンの素晴らしさ)、迫力ある音響と撮影、ここぞとばかりに登場する音楽などが総合的に相まって楽しめる作品です。ツッコミどころも多くありますが、ラストはキチンと終わっているのでエンタメとしても完成しており、映画館の大画面で観ると凄い迫力で見応えがあることなどヒット作の要素も多く、またハリウッド映画に比べて非常に低予算での制作であることが海外からの称賛となっています。

今日はみなさんに劇場の大画面で観る映画という体験型総合芸術を通して、自分のこれからの生き方を考えたり、将来の自分の姿を描いてほしいという願いから、困難に立ち向かう「希望と信念」をテーマに「ゴジラ-1.0」を取り上げました。「ゴジラなんて…」と思った人にこそぜひ観てもらいたい、そして私のように不覚にも涙してしまう感動の体験をしてもらいたいと思っています。(現在、モノクロ版のマイナスカラーも上映中。)

さあ、明日からは2月です。一年で一番短い月ですが、今年は29日まであるうるう年です。節分(3日)や立春(4日)も近いですが、まだ寒い日も続きます。在校生は学年末試験も控えているので健康管理をしっかりと行いながら、自分の可能性を信じて年度の締めくくりに向けて取り組んでいきましょう。

投稿者 : devadmin

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