2025.04.07
令和7年度 1学期始業式 学校長講話
今日から令和7年度を始業します。先週4月5日には新入生を迎えて入学式を行いました。中学生137名(4クラス)、高校生227名(6クラス)を迎えて、近畿大学工学部長の樹野(たつの)先生やPTA会長、役員の方々、そして保護者のみなさんにお越しいただき盛大に執り行うことが出来ました。今年度は、中学(396名)高校(716名)あわせて1,112名で新学期をスタートします。
さて先月3月20日にはJR西高屋駅がリニューアルする完成記念式典があり、私も出席してきましたが、本校の卒業生やその保護者が何名も参列されていました。そこに設置された情報ラウンジ「あったかや」は、設計の当初から本校生、工学部の学生、そして東広島市の職員の方々が一緒に取り組んで完成させた素晴らしい場所です。「あったかや」のかわいいロゴマークもこの3月に卒業した本校生徒がデザインしてくれました。みなさんは、本校がこうした地域や社会と深いつながりを持ち、発展を続けていることを、実感してほしいと思います。ぜひ本校生であることにプライドを持ってください。
今年度も私はみなさんと一緒に、多様な考え方や、変革の激しい世界情勢・SDGsなど様々な問題について考えていくようにしていきたいと思います。今日は年度始めとして人と人とのコミュニケーションや言葉の意味についてお話したいと思います。私がこのテーマを考えたキッカケは、先日あるオーケストラのコンサートで、指揮者の沖澤のどかさんがプレトークとして開演前にお話をしてくださった内容が大変興味深かったからです。そのコンサートで演奏されるリヒャルト・シュトラウスが作曲した交響詩「英雄の生涯」という曲についてのお話でした。
どんな曲か知らない人もいると思うので、イメージしやすいように冒頭の部分を少し流してみます。~曲:約40秒~ この曲、4管編成で40分を超える大曲ですが、タイトルはドイツ語で “Ein Heldenleben”、日本語に訳すと「英雄の生涯」です。しかし以前まだドイツで指揮を勉強中だった沖澤さんは、曲名を答えるテストでこの曲が演奏された時に、とっさにドイツ語が思い出せず、英語で “A Hero’s Life” と答えて、試験官の先生方に笑われたそうです。
沖澤さんの答えは決して間違ってはいなかったのですが、ドイツ語の持つ Ein Heldenleben のニュアンスと、英語の A Hero’s Life には何か微妙な違いがあったのでしょう。沖澤さんも当時を振り返って、「やっぱり何だか違いますよね~。」と笑っておられました。もしかすると日本語の「英雄の生涯」とも違いがあるかもしれませんが、私たちにはそれが分かりません。
逆に例えば私たちが式典などで歌う国歌「君が代」を英語にしてみましょう。そのまま “The Emperor’s Reign” とし訳すとゼンゼン違うし、意訳して “Our People’s World” としても、何だかしっくりきません。やはり「君が代」は英語にしても “Kimi-ga-Yo” の方が曲の持つ内容をちゃんと伝えてくれると思います。
また沖澤さんは、この「英雄の生涯」という曲が、作曲家のリヒャルト・シュトラウス自身の生涯を描いた曲だという一般的な解釈にも疑問を投げかけておられました。ドイツ語のein(アイン)(英語のa)は不定冠詞なので、特定の誰かを示すものではなく「とある」英雄の一生を描いていると思って聴いてほしいとのこと。冠詞ひとつの違いでも大きく解釈が違ってくる言葉という文化があるのはとても面白いと思いました。
みなさんは普段友だちや先輩、後輩と話をするときに、このような言葉の持つ細かいニュアンスについて考えたことがありますか?現代社会で今、最も必要とされている能力はコミュニケーション力だと言われています。日頃何気なく話をする時に、みなさんが伝えようとしている言葉は、本当に相手に思い通りの内容で伝わっているでしょうか?
いつも一緒に話している友だちだから、少しくらい間違っても分かってくれるでしょうか? でも言葉の持つ力はとても大きく、時にはたった一言で相手を傷つけてしまうことがあります。特にLINEやX、インスタなどのSNSでは、一旦送信してしまうと二度と消せずに一生後悔することにもなりかねません。いわゆるデジタルタトゥーですね。不用意に、真偽が分からないのに、無責任に拡散することも大変危険です。
でも言葉は逆に心のこもった一言で、相手を励ましたり勇気づけたりすることも出来るのです。年度初めに際して、みなさんはぜひこの「言葉の力」について考えてください。そして新しいクラスや環境で自分の言葉をプラスの方向で使えるように、発言の前には少しその内容を考えてから話すようにしましょう。そして相手のお話にもしっかりと耳を傾けてください。そうして築いた中学・高校時代の人間関係はきっと一生の宝物になると思います。
また5月1日には近校祭(体育祭)も予定されています。横の繋がりだけでなく、学年を超えた先輩・後輩の繋がりも大切にした、一体感のある行事にしていきましょう。生徒のみなさんが楽しんでもらえるように、昨年度から生徒会執行部が色々とアイディアを出してくれています。例年、保護者のみなさんにはお越し頂けませんが、また動画配信などで様子を見てもらえるようにしていきます。短い準備期間にはなりますが、充実した楽しい思い出作りをしていきましょう!
また今年度は、校長室Openの日を月曜と木曜日にしましたので、何か相談があれば、お昼休みの時間に遠慮なく覗いてください。今日は言葉の持つ意味について一緒に考えました。生徒のみなさん、これから新年度が始まります。何事に対しても知的好奇心を持ち、多様な考え方に耳を傾けてください。みなさん一人ひとりが持つ輝く個性を、もっと高めてほしいという願いを込め、7年目もこの言葉でしめくくります。