2026.03.07
第25回 義務教育修了式 学校長式辞 贈る言葉
今年は如月に早くも春一番が吹き、校庭の梅の木も紅白の可愛い花を咲かせて、みなさんの進学を祝ってくれています。改めて、中学校・義務教育課程を修了された生徒のみなさん、おめでとうございます。みなさんには今一人ずつ中学校の卒業証書を渡しました。この中にはみなさんが友だちや先生方、そして家族と過ごした近中での三年間の思い出がいっぱい詰まっています。
三年前、みなさんが本校に入学した頃は、やっとコロナから抜け出し学校生活も普通に行えるようになった頃でした。それまで自粛していた近校祭なども盛大に実施できました。行事の中、みんなで一緒に取り組んだ充実した日々の記憶は決して消えません。きっとみなさんのかけがえのない財産となるでしょう。しかし世界に目を向けると、ロシアとウクライナの戦争や中米、中東での問題など、罪のない市民が巻き込まれる悲惨な報道が後を絶ちません。一刻も早い終息が望まれます。
そんな中、 National Geographicのネットニュース を見ていると、こんな明るい見出しが目に留まりました。
「ワープ航法」が実現に近づいている 光速を超える方法とは「既知の物理法則と矛盾なく両立させるのが最も簡単な技術」と物理学者
みなさん、「 ワープ 」って知っていますよね。SF映画やアニメ、ゲームなどでお馴染みの、宇宙空間を飛び越えたり、違う時空に一足飛びに進んで行く技術(?)のことです。この記事の中には『約60年前に スター・トレック というアメリカのTVシリーズで放映されて以来、いつの日か人類は光よりも速い「ワープ航法」によって銀河を旅するようになるという夢を抱いてきた』と書いてあります。
私もみなさんと同じ年の頃にこのスター・トレック(当時のタイトルは「 宇宙大作戦 」)を観て、本当にワクワクしながら「こんな時代がいつか来るのかな?」と想像力を膨らませていました。今回のナショジオの記事は、文系の私にはちょっと難しい内容でしたが、今日みなさんにお話ししたいポイントは、技術的なことではなく、当時「夢」でしかなかった技術が、今現実味を帯びてきているという点なのです。
また私が中学生の時は、TVでSF特撮モノや「宇宙戦艦ヤマト」などのアニメを観ていると親から「遊んでばかりいないで、勉強しなさい」と叱られたものです。しかしそんな中で使われている当時は夢のような技術が、今やリアルになっているのを実感しながら、50年前に小言を言われている自分を思い出しました。でも英語には All work and no play makes Jack a dull boy. (よく遊び、よく学べ。)という諺があります。遊びと学びは別々ではなく、表裏一体ではないでしょうか。
だからと言って今日みなさんに「ゲームばかりしてもイイよ!」と言うつもりはありません。好きなものに没頭するのは素晴らしい事ですが、それでも例えばゲームが好きな人は、ただ漠然と無制限にするのではなく、自己管理をしてそこから将来、何を得られるかということを考えてほしいのです。理系に興味のある人はゲーム機の構造などテクニカルなことを、文系に進もうと思う人はストーリーやデザインなどについて考えてみてはどうでしょう。
また私が高校生の時に初めて上映されたSF映画 Star Wars は、約50年経った今も続編やスピンオフ作品が世界中で大人気のシリーズです。どれだけの人たちがあの映画を観て大人になり、様々な職業でSWから得たヒントを基に社会を動かしているか、想像するだけで楽しくなってきます。そういう私もその一人。SF映画と学校の先生に何か共通項があるでしょうか?
私自身は、どちらも「夢」を「現実」に導くヒントを与える仕事かなと思っています。なのでみなさんは高校に進学してからも、たくさんの「夢」を見てください。そしてその夢からリアルを導くことができる職業を思い浮かべていきましょう。私が学生の頃は今の様な AI(Artificial Intelligence) はまだ実用化されてませんでした。携帯電話やスマート・ウォッチもありません。でもSFの世界ではもう当たり前にありました。そして今はみなさんも日常的にAI(GoogleのGeminiくんやChatGPT(チャッピー)など)を勉強や趣味に活用していますよね。
別の例として、1982年(私が大学生の頃)にアメリカで製作された「 ナイトライダー 」というTVアクション・シリーズでは、 ナイト2000 というAIスーパーカーが登場します。ナイト2000は主人公と話をしながら一緒に悪者をやっつけるのですが、当時はそんな夢のような車があればいいな、と思っていた私が、今や自分の車の中でAIと話しながらナビや音楽を操作しています。
今日の話から、私がみなさんに伝えたいことは『想像できないものは、実現できない』ということです。ウルトラ警備隊が持っていた腕時計型TV電話も、 Wi-FiやBluetooth などの無線通信機器も、TVや映画の中で描けたからこそ、実現できました。AIもそうです。ワープ航法もきっと将来、何らかの形で実現できるのではないかと思います。ですからこれから夢を大きく思い描いて、高校生活を充実したものにしてください。
もう一つ伝えたいのは、今みなさんが毎日の生活の中で学んでいることに「無駄なことはない」という点です。みなさんが今、「これって、どんな意味があるの?」と思うような勉強でも、きっと役に立つ時が来ると私は信じています。ですから興味のない学習内容でも、頑張って取り組んでほしいのです。今は必要ないと思われる勉強でも、将来、幸せで充実した生活を送るための選択肢を広げてくれます。
その一番いい例が、先日の修了研究です。私も教室を回りいくつか拝見しましたが、どれもとても興味深い内容でしたし、発表を聞いて初めて知ったこともありました。みなさんは、どうでしたか?友人のプレゼンを見て「へえ~!」と新たな興味を持った人も多かったのではないでしょうか。これからの高校でも、みなさんの好奇心を伸ばす様々な学習や体験を、私たち教職員も全力で支援していきます。
改めまして本日ご臨席いただいた保護者の皆様に、お祝いとお礼を申し上げます。この三年間、何かとご心配やご苦労も多かったことでしょう。そんな中でも本校の教育にご理解とお力添えを賜りましたことを、本当に感謝いたします。高校へ進学したこの後も、引き続きご協力を、どうぞよろしくお願いいたします。
さあ、今日はみなさんの新しい「高等学校」というステージへのレベルアップの第一歩です。校訓にある「人に愛される人、信頼される人、尊敬される人」になるように、みなさんそれぞれが個性を活かしながら、自信と誇りを持ち、4月からは高校生として頑張ってくれることを期待しています。
Aim for a Higher Level !
令和八年三月七日
近畿大学附属 広島中学校 東広島校
校 長 橋本 晃一